仕事観を変えた、秀逸コピーライティング|岩崎俊一さん
こんにちは、ライター&コーディネーターの花輪です。
少し経歴の紹介をしますと、都内で不動産関連のコピーライターと雑誌編集を経験後、長野にUターンしクラウドットでコワーキングの運営とライターを兼務しています。
長野ではコピーライターの業務はあまり行っていませんが、名作コピーには自分の仕事のベースとなっている考え方や言葉がつまっているので、皆さんにご紹介できればと思います。
コピーライター岩崎俊一さん
まずは、下記のコピーをご覧ください。
岩崎俊一さん|「介護付有料老人ホーム ヒルデモア」のコピー
人生は、
冬ではなく、
春で終わりたい。老後とはさびしいものだとあきらめている人が、
まだ、日本には大勢います。
でも、ちょっと待ってください。
長い年月をまじめに働き、子どもを育て、
社会への責任を果たしてきた、
そんな人々の老後がさびしいものであっていいわけがない。
そう思いませんか。生きている限り幸せでいよう。
まず、そう願ってください。
そして、そうなるためにはどうすればいいか、
一生けんめい考えてください。
ヒルデモアは、その答えのひとつになるために生まれました。
デンマーク・コペンハーゲンで出会った
理想の介護住宅をモデルに、
日本にはなかった考え方やシステムのあり方を
徹底的に学び、実践に移しました。
その成果が「ヒルデモアたまプラーザ」や
京都の「ヒルデモア東山」であり、
いよいよオープンの日が来た「ヒルデモア こどもの国」なのです。
人が高齢になり、たとえ介護が必要になった時も、
若い頃と同じように、
自然に笑い、泣き、語り、遊び、感動できること。
新しい思い出を生み出せる、みずみずしい暮らしができること。
歳をとるのは悪くない。そう思える人が、
この国にひとりでもふえるために、
私たちの長い歩みが、もう始まっています。介護付有料老人ホーム ヒルデモア
出展:『幸福を見つめるコピー』岩崎俊一著
勝手に講評:このコピーのココがすごい!
ポイント1)広告の基本・「明るく、楽しく、元気に」を覆す切り口!
「有料老人ホームの広告で死をにおわせるなんて!」と初見でびっくりしたのを今でも覚えています。
広告の基本・「明るく、楽しく、元気に」を覆し、柔らかい表現ではありますが、キャッチの着眼点がするどく革新的。
死を笑い飛ばす強さがご高齢の方のターゲット・インサイトとしてあるからこそ、深く刺さり泣かせるコピーなのだと思います。
ウラ話では、担当者が1年間使用するかどうか悶々とした後、「これ以上のメッセージはあり得ない」と採用したコピーだそうです。すごい!
ポイント2)上品なキャッチ&引き込んで読ませるボディの表現力!
タブーとされている死を扱いながら、直接的な表現に落とし込まず上品な印象を与えるキャッチ、心の琴線にふれ希望を描くボディーコピー。
「なにを言うか?」のするどさを、「どう言うか?」でマイルドに仕上げている秀作です。
コピーライターというと、キャッチコピーのイメージが強いかもしれないですが、ボディーコピーが巧いコピーライターこそが真のコピーライターなのだと思います。
キャッチはまぐれのホームランがありますが、ボディはまぐれがない。
熟練の技、ここに極まれりといった印象です。
ポイント3)それは、本当につまらない仕事か?
個人的なエピソードになるのですが・・・。
コピーライター講座の同期がアパレルやメーカーを担当し、楽しそうな仕事をしている中、自分の担当は不動産のパンフレット制作でした。
若気の至りでは有るのですが、「コピーライターとしてもっと華やかな仕事がしたい!不動産は使っちゃいけない言葉やルールばっかりだし、関係者が多くて調整が大変だし、表現もお堅いしつまんない!(不動産に関わる方々本当にすみません・・・)」と思っていた頃、このコピーに出会って恥ずかしく思いました。
岩崎さんは不動産のお仕事も多いですが、丁寧に人の生活を見つめたコピーをつくり、クライアントに納得してもらい、評価を得ていらっしゃった。
個人的にも、仕事との向き合い方も教えてもらった思い出深いコピーです。
岩崎俊一さんは糸井重里さんのように、ご本人が万人に知られているコピーライター、というわけではないですが、その作品は多く知られています。
描写が丁寧で人間の本質を描くようなコピーが多いので、短編小説を読むような気分でボディコピーを読んでみても。
エッセイも書かれているので、こちらもおすすめ。
出展:『大人の迷子たち』
次回以降も違う方の「仕事観を変えた、秀逸コピーライティング」をご紹介できればと思います。