世の中のシステムがいくらクソでも、人はそれを最後まで信じたがるという話

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先日「マネーショート」という2008年の、世界経済が破綻したリーマンショックが起きることを予測して、そこに賭けた人たちの実話に基づく映画を見て、とても学びがあったのでシェアします。

絶好調の経済?

当時のアメリカを中心とした世界の状況は以下のようなイメージです。

・2000年初期のITバブルが弾けた後、ずっと経済が上がり調子だった
・特に不動産を担保とした証券化した金融商品はボロ儲けできるので建築業界や銀行は景気がよかった
・銀行も投資家も政治も専門家もみんな、これはバブルではなく堅調に経済が上がっているのだと考えていた

その実態

そんな状況で、一部の人たちは実は数字上では異変が起きてくると考えて、実際調査をしてみると以下のようなことがわかりました。

・収入に見合わない住宅ローンを組んでいる人が大勢いる
・住宅営業の言いなりにローンを組まされて複数の住宅とローンを抱えている人が大勢いる
・実際に住宅を購入しても支払い不能になっている人たちがいる
・不良債権が発生しても市場が伸びているので建築業界も銀行も何も問題を感じていない
・いわゆる金融のプロでさえ住宅市場が上がり続けることを疑わなかった
・審査なし、無担保で信用が低い人たちのサブプライムローンを優良なローンなどと混ぜて証券化して販売していた
・独立して権威ある格付け会社が信用の低い債券にもAAAという国債並みの格付けをしていた。その理由が銀行にいい顔しないと仕事を他に取られるから、みたいな理由。
・最初は堅牢と考えていたシステムが無茶苦茶だということに気付いた本人たちもそれを受け入れられない、そんなにめちゃくちゃなわけがないと考える

つまり皆が、実態を知らずに株価を追い続け、格付け会社や金融機関というちゃんとした仕組みがある(と思っている)から問題ないだろう、と踏んでいたわけです。

でも実はそのどれもチェック機関として機能しておらず、自分たちの利益に目を奪われてお互いになんとかなるだろうと思っている状態です。

世の中の仕組みがいかにずさんか、銀行や証券会社、自分たちのことしか考えない住宅営業マンが普通の人の無知を食い物にして、平気で陥れていくかがわかります。

怖いですね、ホラーですね。

賭けに勝ってもハッピーではない

実際に経済が破綻すると読んだ人たちは、投資家や銀行、業界の人から理解してもらえず、嘲笑や怒りを買います。実際にいよいよ破綻の予兆が現れても、なかなか株価が落ちず、自分たちの読みは間違っていたのか?と疑います。

でも最終的にはデフォルトが各銀行で起きて、ずさんな仕組みから生まれたゴミのような証券が世界中の金融機関に売られて出回っていたので、世界で金融破綻が起きたわけです。

映画でも結局みんな自分が正しいと信じ抜いて賭けに勝ったわけだけど、ハッピーというより、ダメなシステムの崩壊により起きる、悲しい出来事に沈むような上記から次のような学びがあります。

・調子が良い時に、ネガティブな情報が来ても現実を見れない
・常識(システム)が明らかにクソでも、人はやはり常識を信じたい
・常識を疑えとは言っても、常識をおかしいと思う自分を疑ってしまう
・専門家はわかっているふりをしている

世の中にある大きな資本だったり公的なものが明らかにおかしくても、そのシステムに頼ろうとする人間心理の闇というか深みというか、幻想から現実に一気に引き戻される考えさせられた映画でした。

参考記事:映画『マネー・ショート』を見ていて混乱するのは、「空売り」を予習したせいだ。 – 本田康博(証券アナリスト)

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