B corpは持続的社会への貢献度を
B corpとは米/ペンシルベニア州に拠点をおく非営利団体B Lab (Bラボ)が運営する、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度です。
https://www.bcorporation.net/en-us/
「B corp」という名称は「Benefit Corporation」を略したものであり「Benefit」には金銭的な「利益」という意味のほかにも、人や社会の幸福につながる「便益」や「恩恵」といった意味を持たせているとのことです。
上記の意味からも伝えられているように従業員の満足度などの透明性、環境への配慮、社会へのパフォーマンス、説明責任を確かに持っているかなど、企業の持続可能性において世界基準でクリアしている会社にだけ認証を与えています。
現在世界83ヶ国の156業種、5,000以上の企業がB Corp認証を取得しており、欧米を中心に知名度・信頼性の高い認証となっています。また、世界各国でB Corp認証取得を目指す企業も増加しているそうです。
認証基準が非常に高いということも有名でありB Corp認証をもつ企業は、社会的・環境的パフォーマンスが最高基準を満たし、利益と目的のバランスが保たれている事を意味しています。
B corp 認定のための審査項目
B-corp認定を受けるためには、オンラインアセスメントによる認証基準および法的要件の2つの条件を満たすことが必要不可欠です。
法的な要件とは、企業の定款文書をB-corp認定の理念に沿った形に変更することとなり、全ての利害関係者に対して等しく扱うことなどを明記することになります。
5つの審査項目
- BIAに回答する内容は企業の規模や事業内容、参入している業界、環境、地域社会に関する約200項目。まず最初のボーダーラインとして80点獲得できるかどうかを確認します。
「ディスクロージャー」という質問項目では「武器等を販売する会社か」「著しい環境汚染をしている会社か」「過去に罰則を受けたことがあるか」などの質問にYes/Noで回答します。
回答そのものは得点に関係ないものの、会社のバックグラウンドを調べる目的で設定されています。回答後B Impact Assesmentに回答の内容を証明する書類を提出する必要があるとのこと。 - 証拠資料を提出するまずはB Lab側で簡単な確認を行います。基本的にはどんな企業でも認証申請をすることができるものの確認プロセスにおいて、過去の認証実績等と照らし合わせながら申請してきた企業が「B Corp」の概念に沿うことができるかをチェックします。
プロセスが開始となるとアナリストが1名アサインされ、BIAの回答の精査に入っていきます。回答したBIAの中からランダムに6~15項目が選ばれ、証拠資料を請求されます。そのため①のステップにおいて、もちろん「善良な企業市民」としてBIAで嘘をついてはいけないが、第三者が認証するにあたり説得可能な証拠があるかどうかも考えながら回答する必要があります。 - インタビューを受けます。B Labのアナリストが会社の状況理解を深めるために、これまで提出された資料に基づきオンライン・インタビューがセットされます。最低1回(1~2時間)、必要に応じて2~3回設定されます。このやりとりを通じてBIAの回答も更新していき、場合によっては失点したり加点を得たりしながら最終的な点数を出します。
また担当してきたアナリスト以外のB Labメンバーもレビューを行い、第三の視点でもB Corpに認定できる企業かどうかチェックされます。 - 認定完了最終的に80点を超えていれば、晴れて認証獲得になります。
正式な通知と共にB Labと規約等文書にサインし、最後のペーパーワークを終えて、ロゴマーク使用権を得る。他の認証等と同様に認証費も毎年支払う必要があるが、売上高に比例した設定となっており、最低$500(5万円強)程度となっている(2021年1月)。
この認証費は、アセスメントプロセスや認証の質の維持等に係る費用に加え、全部WEB上でできるという便利なプラットフォームに関わるもの、ロゴ使用料、そしてB Lab認証企業同士の世界規模での交流等の対価として支払う。
上記の厳正な審査をクリアした企業のみが認証を受けられるようになっています。
B corpの掲げる5つのミッション
5つのカテゴリー上では200以上の質問からなるBインパクトアセスメント調査表に答え、200ポイント中合計で80ポイント以上を獲得する必要があります。質問や調査の内容としては下記の5つのミッションをクリアしているかどうかが大きな基準となっています。
- ガバナンス
ミッションとエンゲージメント、倫理と透明性、ミッションの締結 - 従業員
経済的安定性、従業員の健康とウェルネスと安全、キャリア開発、エンゲージメントと満足度 - コミュニティ
多様性、公平性とインクルージョン、経済的影響度、市民参加と支援、サプライチェーン・マネジメント - 環境
環境マネジメント、大気と気候、水、土地と生物多様性 - 顧客
顧客管理
こちらで得たポイントは取得後もBcorpスコアとして表示される形式となっています。
各企業の売上に合った会費も支払意が義務づけられており、認証取得後も3年ごとに継続の審査が行われます。
このため認証後も常に良い会社であるための努力を怠っていないかというチェックを受けるというのも大きな特徴であり、常に認証下には良い会社が並ぶように管理されています。
日本のB corp認証企業とは?
2022年1月の段階で7社だったものが、2022年11月段階では以下の15社となっています。
(認証取得日順)
- 株式会社シルクウェーブ産業
- 石井造園株式会社
- フリージア株式会社
- 日産通信株式会社
- 株式会社泪橋ラボ
- ダノンジャパン株式会社
- 株式会社エコリング
- 合同会社レドリボング
- 株式会社シグマクシス・ホールディングス
- 合同会社mayunowa
- 株式会社フォーメンステーション
- 株式会社オシンテック
- 株式会社クラダシ
- 株式会社CFCL
- ライフイズテック株式会社
また、この表にもある通り日本で初めてB-corp認定を受けた企業が2016年3月認証取得をした「シルクウェーブ産業」になります。
夢の素材とまで呼ばれたシルクウェーブを群馬県蚕糸課と蚕糸昆虫農業試験所との三者共同研究で開発を行っている企業になっています。
創業は2008年と比較的若い会社ではありますが、企業の取り組みの特徴は営利のみを求めていない方針が特徴的です。
独自の研究開発などにより、新しいテーマへの取り組みを行い「世界全体の抱える諸問題を解決する」という表明もされています。
そして、日本で2番目にB-corp認定を受けたのが横浜市を中心に造園・土木工事・水道施設工事などを行う「石井造園」です。
2008年に横浜型地域貢献企業に認定され、2010年度横浜市優良工事請負業者を受賞・B-corpのBEST for THE WORLD2017アワードも受賞されています。
事例:食で社会問題を解決する企業「クラダシ」
2022年7月には「クラダシ」という企業がB corp認証を受けました。
「クラダシ」は「毎日のお買い物が社会や地球を良くすることに繋がります」と伝える社会貢献型ショッピングサイトとなっています。
フードロス削減だけでなく売上の一部は社会貢献団体に寄付される仕組みをとっておりながら誰でも気軽にソーシャルグッドに参加できる仕組みとなっており、まさしくBcorpが目指すような社会的にも環境的にも優しい未来に近しいビジネスモデルとして注目を集めています。
このサービス性からB corpの採点の際は社会性、環境性、経済性を包括したビジネスが評価され、総合得点110.1ポイントを獲得しています。インパクトスコアであるこの110.1ポイントは、日本企業では上位2番目(※2022年6月時点)となっています。
クラダシの社会貢献性は大きく2点挙げられます。
- スーパーでいつも購入している商品や産地直送の贅沢な食材、普段はなかなか手を伸ばせない珍しい商品などが、おトクな価格で購入できる。賞味期限が近づいてしまったり、パッケージの印字ミスや少しの傷で、まだ食べられるのにフードロスとなってしまう商品をKuradashiで購入することでフードロス削減に繋げられる。
- Kuradashiでお買い物する際に、購入金額の一部を自分が応援したい社会貢献団体に寄付できます。環境保護や海外支援、動物保護、災害支援など、SDGs17の項目に当てはまる団体を支援することで、社会貢献の輪が広がります。
このように今まで見過ごされてきたような課題を解決へ導きながら、環境にも配慮し持続可能なものとして展開していくというモデルはとても大きな良い影響をもたらすのではと思います。
こうした取り組みの一つ一つがこれからの社会を少しずつ変えていきながら、それを受け取った人々も社会貢献性や持続可能性の高い商品やサービスを利用することになり利用者だとしても問題解決の協力者・当事者となることができます。
個人が発起人となり大きく世の中を変えていくことは難しいことですが、こうした意識を商品やサーブスと通して一人一人が持つことで徐々に上がるのではないかと思います。
これからも日本から認証取得を目指す企業は増えていくと考えられます。
またBcorp認証を取得する(高スコアを目指す)という一つの基準が設けられることによって、今後の日本のビジネスモデルも大きく変わっていくことにも期待です。
可視化される「良い会社」
社会にポジティブなムーブメントを起こすために現在必要なことは「内部にも外部にも優しい効果を持続して生み出す」という事なのかもしれません。
人にも環境にも優しく、そこから広まっていく思想はこれからの日本の未来を大きく変えることとなるのでと考えます。
SDGsやオーガニックなどの認証に比べてまだ認知度が低いことは明らかであるものの、徐々にBcorpに関心を持つ企業も国内では増え始めています。
経済的に伸ばしていくということももちろん大切な働きですが、同時に環境や社会に配慮した取り組みであるかどうかという点も大切になってきている世の中です。
いま、良い会社が視える化する時代に「Bcorpの認証を受けている会社の商品を買いたい。サービスを受けたい。」という考えが普及していく未来もそう遠くないのかもしれません。