【2023年5月ダイジェスト】ベーシックインカムを目指すWorldcoinが1億ドルを調達/新しいAIツールで「声」をオープンソース化を発表/ TikTokがバイラルしやすい時代は終わった/Appleのヘッドセットが6月公開予定etc…
テクノロジーやマーケティング、トレンド、カルチャーなどのニュースをMonthlyで紹介する本シリーズ。2023年5月に社内で話題になったTOPICをダイジェストします。Weeklyで更新を予定していきます。
▼目次
- ブレイン・コンピューター・インターフェース技術により麻痺した男性の歩行能力が回復
- 新しいAIツールで「声」をオープンソース化
- 2023年版 アメリカで認知度が高いブランドランキング
- TikTokがバイラルしやすい時代は終わった
- Appleのヘッドセットが6月公開予定
- アメリカの大学入学者数、前年比4.31%減少
- ベーシックインカムを目指すWorldcoinが1億ドルを調達
- OpenAI CEOのSam Altmanがアメリカの公聴会に出席
- Elon MuskがCNBCのインタビューで語る
- YouTube 昨年の収益が400億ドルを突破
- AmazonがTikTok風のショッピングフィードをアメリカ向けに提供開始
- ドライブスルーにAI音声ボットを導入した実証実験で売上向上効果も
- メタバースはオワコンなのか?
- Google、カンファレンスにて大幅にAI機能のリリースを発表
- Stripe CEO × OpenAI CEO の対談動画
ブレイン・コンピューター・インターフェース技術により麻痺した男性の歩行能力が回復
A paralyzed man walks with brain and spine implants
ブレイン・コンピューター・インターフェース技術を使用し、脳と脊髄に無線で通信する電子機器を埋め込み、麻痺した男性の歩行能力の回復したという記事です。
- 脳と脊髄の間に無線のインターフェースを作成
- 脳に突き刺すのではなく、脳の上に置く装置を採用
- Elon Muskのニューラリンク社の脳インプラント技術と同じ分野
- 商品化には5年ほどかかりそう
実際に男性は歩行の途中で立ち止まったり、歩幅を調整したり、階段などの不規則な地形を移動したりできるようになったそうです。技術発展のポジティブな側面が見えた記事でした。このように脳とコンピューターを接続する研究が加速しており、SFのような世界が実現してきています。
このような技術の恩恵をなるべく多くの人が体験できるよう、格差が生じないような社会的な仕組みデザインが必要だなと感じました。
新しいAIツールで「声」をオープンソース化
Grimes Invited Anyone to Make A.I. Grimes Songs. Here Are Her Reviews.
4月にSpotify上で、AIツールを使用しDrakeとThe Weekendの声で歌われた「Heart On My Sleeve」が公開され25万回以上再生されました(現在は著作権の問題から配信停止)。TikTok上のアーティストたちの声でトレーニングした生成型AIでつくられた「音声エミュレーションフィルター」を使って、有名アーティストが歌っているように聞こえる曲が話題になり音楽業界で話題になりました。
プロデューサー兼ポップシンガーのGrimesはそれにインスパイアを受けて、誰でも自分の声を使って曲を作れるよう彼女の声をオープンソース化し、Elf.techというソフトウェアと提携して簡単にGrimesの声を使えるようにしました。これまで15,000以上のボーカル変換が行われ、 300以上の曲が配信されたようです。Grimesは配信された曲の収益に対し50%の成功報酬を受け取ります。
音楽業界はCD→デジタル配信→サブスクリプションとビジネスモデルが激しく変化してきました。そしてデジタル化したことにより動画や音楽が無断で大量に複製されるという問題を抱えるようになりました。またAIやディープフェイクの技術革新によりアーティストとして自分の知的所有権(IP)をどのように考えるか?というスタンスを問われています。
今回の事例のように今後は自分の声や音楽、肖像権などを一つのIPとしてデジタル化し、それをいろんなプラットフォームでリミックスしやすい形に流通させることにより、「AIが稼ぐ」という形の一つの事例となるような記事だと思いました。
2023年版 アメリカで認知度が高いブランドランキング
The 2023 Axios Harris Poll 100 reputation rankings
Axiosの調査から、2023年のアメリカで最も注目されているブランドのランキングがレポートされていました。
- 1位:Patagonia
- 2位:Costco
- 3位:John Deere
今年のランキングは、3月13日から28日まで実施された全国代表サンプルからの16,310人のアメリカ人を対象とした調査に基づいています。
下位のワースト5にはTwitter、Meta、The Trump Organizationなどがあり、認知度と人気が相関しないことが分かります。
TikTokがバイラルしやすい時代は終わった
Beyond Virality: Understanding TikTok’s New Growth Patterns
TikTokは、すぐにフォロワーを増やせるインスタントバイラルなSNSとして認知されていましたが、この数ヶ月の中で、再生数や増加率に変化が見られるようです。
- 2022年では24時間で1万再生だったものが、現在は1週間で1万再生
- 過去1年半において、再生回数が1000万回を超える動画の数が半減
- 再生回数が1万回以上や10万回以上の動画の平均視聴回数も減少傾向
成長パターンが鈍化している要因として、アルゴリズムが変化したことがあげられます。今までと異なり、検索に重点を置き、エンゲージメントを判断するために時間をかけるようアルゴリズムの調整を行なっているようです
2023年3月の時点でTikTokの米国ユーザーベースが1億5000万人、全世界で16億人以上に成長していますが、一方でモンタナ州でTikTokの新規ダウンロードを来年から禁止になるなど、アメリカ國内でTikTok自体を禁止にしていく動きがより強くなりそうです。
企業としてはプラットフォームの流動性を考慮しながら、忍耐強いアプローチと現実的な期待値を持ちながらインフルエンサーとのパートナーシップを組むことが必要です。
Appleのヘッドセットが6月公開予定
Apple’s New Headset Meets Reality
6月5日、AppleのCEO Tim Cookは、WWDC(Worldwide Developers Conference)のバーチャルステージで、複合現実型ヘッドセットの公開を予定しているようです。
- 新しいソフトウェア「xrOS」で動作
- 価格は
約3,000ドル(約40万円)か?3,499ドル※6/6 Apple発表より - 当初想定していた眼鏡のようなスマートなデバイスにはならなそう
7年かけて開発してきたAppleとしてはiPadやApple Watch並みの事業を目指しています。まだVR/AR(XR)のマーケットのブレイクスルーが見えない中で、Appleにとってもここ数十年で最もリスクの高い製品発売となる可能性があります。
しかし関わったメンバーを見ると、デザイン、経営、エンジニアリング、コンテンツ、メモリチップ、OSレイヤーなどAppleの技術の錚々たる部分を注ぎ込んできたことが分かります。
Apple’s Key Decision-Makers Behind the New Mixed-Reality Headset
理想のものではないといえ、MetaのVR技術の基盤となったOculusの創業者、Palmer Luckeyによると「Appleのヘッドセットはとても良い」との発言から、一定のクオリティを達成していると考えられます。
現状に関してはユーザーが集まるような爆発的なコンテンツが存在しないことが、XR市場が伸び悩んでいる要因です。しかしXR市場が遠くない未来、大きなマーケットになることは間違いないことです。あのAppleが製品がどのようなレベルの製品を出してくるのか、楽しみです。
アメリカの大学入学者数、前年比4.31%減少
College Enrollment & Student Demographic Statistics
2020年秋におけるアメリカの大学入学者数と学生人口についての統計レポートが出ていました。
- アメリカの大学入学者数は1,585万人、前年比で4.31%減少
- より多くのアメリカ人が高等教育を断念している
- アメリカの成人の 6.6% がパートタイムまたはフルタイムの学生として大学に在籍している
アメリカ国内における経済的な貧富の差が広がっていると予想されます。一方で、成人になっても学び続ける人が一定数いるということが分かります。ちなみに日本の大学入学者のうち25歳以上の割合はわずか2.4%ということです。
債務上限問題など経済的にも転換期にあるアメリカですが、イノベーティブな分野に対する投資と人材が集まる国でもあります。経済でも政治でも、常に両極のバランスをとりながらダイナミックに動いている様子が、アメリカの強さだなと感じました。
ベーシックインカムを目指すWorldcoinが1億ドルを調達
OpenAI’s Sam Altman nears $100mn funding for Worldcoin crypto project
Worldcoinという仮想通貨プロジェクトが1億ドルを調達しようとしているというニュース。Worldcoinとは、ChatGPTを開発するOpenAIのCEOであるSam Altmanが展開するプロジェクトです。このプロジェクトは、汎用人工知能(AGI)が生み出した利益を世界中の人々に仮想通貨を使って分配することで、ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)の実現を目指すものです。
Worldcoinが発行するトークンを受け取るためには、「Orb」と呼ばれるデバイスで眼球の虹彩をスキャンし、その虹彩データを『デジタルアイデンティティ』として登録することにより、無料で受け取ることができます。Sam Altmanは、将来においてAIが生み出す利益をベーシックインカムの資金にできると考えています。
このプロジェクトについては、成功するかどうか計り知れませんが、AIの発展における課題とそれに対するソリューションとしてのWorldcoinについて調べて、その壮大さと思考の深さを知ることができました。
OpenAI CEOのSam Altmanがアメリカの公聴会に出席
アメリカの公聴会に出席したOpenAI CEOのSam Altmanの様子が動画で公開されていました。
- OpenAIの株を持っていない
- AIの悪質利用が選挙結果に影響する可能性を危惧している、ある程度の法律は定めた方が良い
- アメリカのAI規制を進めるべき、それがグローバルスタンダードになり得る
- ChatGPT-5の開発は次の半年間で始める計画はない
- 労働者への影響は大きいが、新しい産業革命が起きる。
- ユーザーが人間ではなくAIと接していることは可視化するべき。
- AIの開発会社へ規制強化をすべき
Sam AltmanがOpen AIの株を持っておらず、大きな報酬を得ていないことを明かしています。「好きだからやっているだけ」という姿勢の真偽は分かりませんが、Open AIやWorldcoinなどの事業を通して、AIと人類の未来に関する彼の思考を踏まえると、非常に公聴会の雰囲気も良く、議会からも好意的に見られているのかなと感じました。
Elon MuskがCNBCのインタビューで語る
TeslaやTwitterのCEOであるElon Muskが、米ニュースメディア大手「CNBC」のインタビューでTwitterやTesla、OpenAIについて語っていました。
- Twitterは人類のサイバネティック・コレクティブ・マインドを目指す。
- そのために400万ドル分の広告売上を失ってもよい
- Teslaで広告モデルを試す用意がある
- 在宅勤務は「道徳的に間違っている」
- 言いたいことは言う。その結果お金がなくなるなら、それでよい
Elon Muskのあらゆる言動が注目されますが、「Twitterはサイバネティックな超知性を目指している」とElon Muskは語っており、より大きな視野でTwitterを捉えていると感じました。買収前には「Twitterは透明性の高いSNSを目指すべき」とも発言していましたが、実際にElon MuskはTwitterの買収後、ブラックボックス化されていたTwitterのソースコードを公開しています。
またTeslaではまだ広告をしたことがない、というのも驚きです。Elon MuskのPR力が凄すぎる。「凡人には見えていない景色が見えているんだな」と思った動画でした。
YouTube 昨年の収益が400億ドルを突破
YouTube Says Revenue Rose to $40 Billion, Boosted by Subscriptions
YouTubeは、昨年の売上が400億ドル(約5兆5千億円)を達成したと発表しました。Alphabetの決算から予測すると、サブスクリプションが100億ドル(約1兆3千億円)あると考えられます。同年の動画サブスクリプションサービスを見ると
- Netflixが310億ドル
- DisneyPlusが210億ドル
- Amazon Primeが35億ドル
となっており、YouTubeのサブスクリプションが相当成功しているのが分かります。ちなみにYouTubeがGoogleに買収された2006年時の時価総額は16億ドルだったので、いかに売上を伸ばしているかが分かります。
YouTubeがサブスクリプションを導入したのが、2018年11月ということです。まもなくスキップ不可能な30秒広告も導入予定ということで、もはや無料でYouTubeの広告量を視聴し続けることが辛くなりそうです。
AmazonがTikTok風のショッピングフィードをアメリカ向けに提供開始
Amazon’s TikTok-like Inspire shopping feed is now available to all customers in the US
Amazonは、アメリカ国内限定で新機能「Inspire」をリリースし、より新しい購入体験の動線を模索している動きがありました。 この機能では、アプリ内でショッピングフィードが表示され、ショート動画と写真のフィードから製品を検索し買い物ができます。いわゆるTikTokで出来るような機能がAmazonでもできるようになりました。
また「Amazon Influencer Program」というアフェリエイトのようなプログラムも用意されており、クリエイター(インフルエンサー)がコンテンツ投稿した商品を、ユーザーが購入すると、クリエイターが販売手数料を得ることができます。
ただしAmazonは、以前にもPinterestのような機能をリリースしたり、Amazon Sparkと呼ばれるInstagramのクローンを立ち上げたりしていますが、いずれも失敗しています。今回の機能がどれだけ効果を持つかは今後の動きを注視していく必要がありそうです。
AmazonやGoogleはSNSのカルチャーを作るのが苦手というところがありますが、SNSのような購入意欲を創造するチャネルは是非とも欲しいはずです。eコマースの巨人であるAmazonの、商品検索以外での購入体験の方向性が垣間見えた、興味深い記事でした。
ドライブスルーにAI音声ボットを導入した実証実験で売上向上効果も
CKE partners with 3 drive-thru AI firms
米国のHardee’s and Carl’s Jr. の店舗で、ドライブスルーにAI音声ボットを導入した実証実験の効果がレポートされていました。
実証実験の結果は以下のとおりです。
- 注文処理の速度と精度の向上により、顧客の待ち時間が短縮
- 1 日あたり 5 ~ 10 時間の労働効率を実現
- 注文の 98% が人間の介入が不要
- アップセルの機会を増やしてマージンを改善
驚きなのは生産性や効率が上がったということはもちろん、アップセルの機会を増やして、売上にも貢献したというところです。
ただし注文精度が約 80%ということであり、課題は残っているようですが、今後Hardee’s and Carl’s Jr. の2,800店舗、世界中で 1,000店舗で展開予定ということです。
メタバースはオワコンなのか?
一時期メタバースというキーワードがバズワード化して、さまざまな企業が参入したというニュースが流れていました。しかし現在撤退が相次いでおり、メタバースへの過剰な期待と現状のギャップについて書かれた記事でした。
その記事は、『メタバースへ巨額の投資を行なってきたが、思うような成果が得られず、多くの企業で撤退とレイオフ(解雇)が行われるのは詐欺的だ』という主張でした。
このニュースを見たときに以下の二点を念頭に置いておく必要があるなと思いました。
人は技術に過剰の期待を抱く
このような期待される技術への失望や期待値が外れるということはよくあることです。ガートナーのハイプサイクルでも、多くの技術への期待が一時的に過剰になるというのは、人類における経験則にあるものです。AIのように50-60年かけて期待と失望を繰り返してきて、ようやくChatGPTのように、人間の予測を遥かに超える速さで進化するのが技術です。
新しい技術を誰が使っているかを見る
メタバースの需要によりアバターアプリのダウンロード数がこの2年で3倍に急増
メタバースの概念が「市場のどの層」が使っているのかが重要です。現時点で相対的にユーザー数が多くなくても、Z世代やα世代と呼ばれる、10代を中心としたユーザーが利用しているということが、今後メタバースというテクノロジー領域の拡大を示していると思います。
実際にその領域がいつブレイクスルーするかは不明瞭ですが、AIの技術革新がこのメタバース領域を拡張を加速することは確実です。
Google、カンファレンスにて大幅にAI機能のリリースを発表
Googleは恒例のカンファレンスにて様々なプロダクトのアップデート・リリースがされており、特に多くの時間をAIの機能発表に使っていました。
- GoogleのAIチャット「Bard」が40言語でリリース(日本語も含む)
- Google、次世代AI「PaLM 2」を発表(Geminiというマルチモーダル基盤モデルの開発にすでに着手しているとのこと。)
- Googleのテキストから音楽生成するAIツール「MusicLM」がリリース。
- GoogleがAdobeの画像生成モデル「Firefly」と連携。
- GoogleがGitHubのコード生成ツールCopilot競合サービスをローンチ
- Google が Project Tailwind を公開 — ドキュメントから学習する AI ノートブックのプロトタイプ
GoogleはOpen AIと比較してまだ機能として完全ではないと言われながら、Google Workspaceなどと連携させてきたり、Adobeとのコラボレーションを見せたり、このスピード感でサービスをリリースするのはさすがと感じました。
Meta、Microsoft、IBMなどからも同日にAIリリース情報
実は同日にGoogleだけでなく各社AI機能についてリリースをされていました。
キャッチできた情報を羅列します。
- Meta、マルチモーダルAI「ImageBind」をオープンソース化
- Microsoft 、Bing はウェイティングリストなしで利用可能に
- IBM が新しい watsonx、AIおよびデータ プラットフォームを発表
- AI ミュージックセパレータ AudioShake は、Metallica の Black Squirrel、Peermusic、AJR などから 270 万ドルの資金調達
- Midjourney は 3Dモデル対応を開始(独自情報)
AIの進化の速さは更に加速しているように感じます。社内では、作り手である私たちもよりこの状況を注視しながら、且つ人間とAIが共存する社会におけるクリエイティブについて考えていかなければ、という話をしました。
Stripe CEO × OpenAI CEO の対談動画
Stripe CEOの Patrick Collison と OpenAI CEOの Sam Altmanの対談動画で、どのようにAIを開発すべきか、誰がどのようにAIに正しい教育をすべきか、そのためにどんな人材が必要かなど、深いところと現状がオープンに語られていると感じました。
- オープンソースの進化が進んでいる、この数年で更に拡大する
- Metaによる「LLaMA」もオープンソース化するべき
- 技術的改善をするために個人やスモールビジネスへの資金支援をしていくべき
- LLMは検索を変えるかもしれないけど、検索の脅威ではない
PatrickもSam Altmanも、起業家でもあり思想家としても知られています。このレベルの会話がオープンでなされていることが素晴らしいと感じましたし、単なる技術だけでなく、どのように社会に受け入れられるべきかという、思考の深さなど非常に学びが多い動画でした。
※本記事はChatGPTを活用して記事作成をしております。
※メイン画像はMidjourneyを活用して画像作成をしております