リテールメディアの今と未来
小売店の新しい収益媒体として語られる「リテールメディア」というキーワードをお聞きになったことはありますか?本格的にアフターコロナのフェーズに入った日本でも、AIやロボットなどによる自動化が加速し、リテールのビジネスモデルが転換点を迎えている気配がします。リテールメディアの今と未来についてリサーチしてみました。
リテールメディアとは?
リテールメディアとは、小売事業者(Retail)がオンラインストアやリアル店舗を広告媒体(Media)として提供する、デジタル広告やデータを活用した集客施策のことです。デジタル広告にはWeb広告、アプリ広告、店舗でのデジタルサイネージ広告などがあります。
リテールメディアとは、小売店やオンラインショッピングサイトなどの販売チャネルを利用して広告やプロモーションを展開する手法です。これにより、消費者が購入過程にいる時点での露出と関与を最大化することができます。
日本国内においても、大手コンビニやドラックストアなどがリテールメディアのサービスを提供しています。
リテールメディアが拡大している背景
消費者の購買習慣の変化
新型コロナウイルス感染症の期間を経て、消費者の多くがオンラインでの生活雑貨全般の購入に対して積極的になっています。これは日本においても、例えばシニア世代などの今までオンラインから遠かった世代でも見られる変化です。そして消費者の選択肢が多様になり、嗜好に合わせていつでもどこでもショッピングを楽しんでいます。
クッキーレスな広告環境へ
2018年5月に「EU一般データ保護規則」(GDPR:General Data Protection Regulation)がEU域内の各国に適用されたことから始まり、各国で個人情報保護に関する規制が強まってきました。それに伴い、AppleのSafariはサードパーティCookieのサポートを廃止、GoogleのChromeも2024年後半にサードパーティCookieのサポートを廃止する予定です。
クッキーレス時代に向けて、ファーストパーティデータやゼロパーティデータなどのリテールメディアが持つ消費者のユニークなデータは、直販をしていないまたは顧客データをあまり持っていないブランドにとって価値があります。
リアル店舗の価値が高まっている
リテール(小売業者)はリテールメディアを通じて広告収入を得ることができます。すでに持っている顧客とのタッチポイントにブランドやメーカーの商品の露出し、データに基づいて消費者に適切に訴求することにより、売上を最大化させることができます。さらにそこから得たデータを活用することにより、持続的に顧客エンゲージメントを向上させることも可能です。
オンラインストアは加速度的に増えており、オンラインでは差別化できなくなっています。リアル店舗を持っている小売事業者の価値は高まっており、そのメディアとしての強みを最大限に活かせるのがリテールメディアです。
一方、リテール(小売業者)側も「モノ」が溢れており、選択肢も増えている中で、自分たちだけでモノを仕入れて売るビジネスモデルでは、収益の確保が難しくなっている現状があります。
リテールメディアの”三方良し”
リテールメディアがもたらす変化は、私たち消費者にも商品のたどり着き方やディスカバリー(発見)のユーザー体験に変化をもたらします。そしてもちろんリテールやブランドにとってもメリットがあります。
リテール(小売業者)にとってのメリット
- 広告スポットを創出し新たな収入源の確保ができる
- 既存のアセットをスマートに活用できる
- データを戦略的に活用し顧客エンゲージメントを高められる
本業の小売販売よりも利益率が高い広告事業による収益の安定性を高めることができます。
ブランド(広告主)にとってのメリット
- リテールの持つファーストパーティデータを活用できる
- 顧客情報に基づいた精度の高いマーケティングが可能
- PDCAサイクルを効果的に行える
よりダイレクトにブランドもカスタマーと接触でき、ふと目に入った広告の商品の購買意欲を高めるリーセンシー効果を期待できます。
カスタマー(消費者)にとってのメリット
- 自分に無関係な広告が減る
- 興味関心に合う商品とマッチングする機会が増える
- お得な情報やクーポンなどが受け取れ、リッチなユーザー体験ができる
商品を購入する際の体験により安心感を感じたり、選ぶ時の選択肢が増えることになります。
急成長するリテールメディア
アメリカでは2022 年のリテールメディアの広告支出は408億1,000 万ドルに達し、パンデミック前の総額の3倍以上に達すると予想されています。
アメリカの広告主の82%は、今後リテールメディアネットワークへの支出水準を増やすことを計画しており、アクセサリーやハイブランド、家庭用電化製品、美容品、日用雑貨のブランドが意欲的と言われています。
日本においてもリテールメディア広告市場は2022年に135億円、2026年には805億円に拡大すると予測されます。
リテールメディアの成功事例
Walmart(ウォルマート)
リテールメディアの成功事例で必ず出てくるのがWalmartです。2015年の段階では完全にアナログな非デジタルネイティブ企業だったスーパーだったWalmart。Amazonの「エブリシングストア」の背中を追って徹底的に企業文化そのものを変革してきました。2016年から2018年の間にBonobosやJetなどのデジタルネイティブなD2Cブランドを次々に買収して、その遺伝子を取り込んでいったのです。そして店舗を「倉庫」や「配送拠点」、「ECのストアピックアップ」として再定義して、デジタルネイティブ企業の、カスタマーセントリック重視の経営を、Walmartのものにしました。
Walmartとしてはデジタル化が整ったタイミングでコロナ禍に入り、オンライングロサリーの市場拡大に伴い、ストアピックアップと配送サービスが2021年度第1四半期に300%成長し、「5年間分の成長を5週間で成し遂げた」と言います。
Walmartはデジタル化に成功する中で、実店舗での豊富なファーストパーティデータを活用しリテールメディアをいち早く成功させました。2021年の米国における純広告収入は21億ドル(約2700億円)と言われており、2024年までにはほぼ3倍の45億2000万ドル(約6300億円)となり、米国の小売メディアデジタル広告支出の8.2%のシェアを占めると予測され、デジタル広告エコシステムにおいて、Snap、Twitter、Yahooを超えて、より重要なプレーヤーとして台頭するのではないかと言われています。
次々とリテールメディア広告に参入するデジタルネイティブ企業
リテールメディアは、AmazonやeBay、Walmart、Target、Instacartなどの、多様なデジタルネイティブなリテール企業の参入が加速しています。日本においてはセブンやイオンなどもこの新広告市場に参入しています。
そしてこの市場を寡占しているAmazonは、このリテールメディアにおいて年間約300億ドル(約4兆840億円)の広告収入を得ており、この拡大する広告市場に大きなプラットフォーム企業も参入する姿勢を見せています。
Metaもリテールメディア広告に参入
メタ 、 リテールメディア に参入:ウォルグリーンなど大手小売のテスト導入でも成果
巨大テック企業であるMetaが、よりオムニチャネルに特化した広告商品のテストを行なっており、リリースが近いようです。オンラインでの購入だけでなく、店舗での購入や、ローカル在庫を移動を促進することも目指しています。
GoogleもジェネレーティブAIによるリテールメディア体験を強化
リテールメディアの台頭が脅威に:メタとGoogle、 AI を活用した新広告サービスを発表
2023年5月のカンファレンスで、Googleは、サーチ・ジェネレーティブ・エクスペリエンス(SGE)と呼ばれる新機能をテスト中であると発表しました。Googleは、ユーザーは「より会話的な体験をすることを好む」として、ユーザーに代わってAIがショッピングリサーチを行い、現在の複雑な購入に伴う情報整理や発見に関する「複雑」なことを支援することにより、ショッピング体験を「スーパーチャージ」すると言います。
リテールメディアの未来
リテールメディアは多くのブランドや企業が注力する広告媒体になるでしょう。特に購買に直接つながるシチュエーションや購入直後のロイヤルティの高い状態でのクロスセルやアップセルなど、多様なショッピング体験を演出可能です。
瞬発力のあるマーケティングが求められる
特にリテールメディアとソーシャルコマースの組み合わせは、よりショッピング体験を向上させると思われます。パーソナライゼーションの精度を高めたり、ソーシャルの「今」という瞬間的なマーケティングにユーザーを引き込むことができるかもしれません。ただユーザーのアクションに反応したり、それをソーシャルで更にユーザーとコラボレーションにつなげるなど、瞬発力のあるインタラクティブなマーケティングが求められるようになると思います。
XRによる新しいコマース体験
リテールメディアの中で間違いなく大きなビッグウェーブになるのが、ARをはじめとするXR領域の革新です。実店舗でのデジタルサイネージによる広告などに加え、AR(拡張現実)は、実店舗での商品情報や使用例など、圧倒的な情報量をスマートフォンやスマートグラスなどにより実現します。よりリッチなコンテンツや訴求が可能になり、ユーザーにとってもより多くの情報から選択することができるようになります。
まとめ
リテールメディアは新しい概念のものではありません。しかしインターネット網の拡大、AR技術の進歩、AIの革新、高性能なデバイスの登場など、あらゆる技術が組み合わせられて、インパクトのある形で実現できるようになってきました。
重要なのは何度も書きますが、リアル店舗でユーザーと接点を持っているということが大事です。この価値はデジタル化が進むほど、多くの企業やブランドにとって価値があります。このユーザーとの接点をいかにデジタルデータとして価値にできるか?そしてそれを顧客体験に落とし込めるかがビジネス戦略のKeyになると思います。
ビジネスサイドとしてはいつどのように自社のサービスに導入することが適切か悩むところかもしれませんが、DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するためには、最善のタイミングは「今」だと思います。
この記事も定期的にアップデートしていければと思います。
参考サイト:
セブン-イレブン・ジャパンが挑戦する、リテールメディア参入と新たな小売業の形
「世界最大の小売業」ウォルマートのデジタルトランスフォーメーションと日本企業への示唆
靴のクラークス 、 リテールメディア を活用した新戦略:小売店限定アイテムも販売
CARTA HOLDINGS、リテールメディア広告市場調査を実施
What’s behind Walmart’s DTC selloffs?
What you need to know about retail media in 5 charts
※本記事はChatGPTを活用して作成しております。