2025年、新しい世界観を描く

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今年も一年が始まりました。

2024年はクラウドット株式会社では「作り手として社会とつながる」をテーマにしながら、アート実験やプロダクト開発を行ってまいりました。私たちのミッションである「社会にインスピレーションを与える」という、その対象となる社会の領域を広げられた年だったと考えております。

テクノロジーの世界は本当に激しい変化を見せています。1週間毎に世界をひっくり返すようなテクノロジーのリリースが続く時もあり、これまで以上にキャッチアップすることに難しさと虚しさを感じるような時もありました。

2024年の初頭に予想していたトレンドは以下の3つでした。

  • アメリカ大統領選挙の行方による混沌
  • ビットコイン(BTC)がよりリアルワールドに影響を与える
  • 生成AIのビジネスへの実装

2024年、より混沌とする世界を眺める

2024年を振り返りどのような社会変化が起きたのか、そして2025年はどんな未来が想定できるのか考えたいと思います。

トランプ大統領就任、加速するテクノロジーへの圧倒的な投資

画像引用:Bloomberg

紆余曲折の中アメリカ大統領選挙はトランプ氏の当選により、今後4年間のアメリカは投資を加速し、強いアメリカファーストな国を目指すことになります。イーロン・マスク氏の強運は凄まじくX(旧Twitter)の買収によって得た影響力が功を奏し、今やその政治介入が、各国で物議を醸しています。

そしてテクノリバタリアンの思想がアメリカの方向性にかなりのインパクトで影響を与えると思われます。

主要な人物には、JD Vance (元VC/副大統領)、Vivek Ramaswamy (起業家/政府効率化担当)、David Sacks (Paypalマフィアの1人/AI・暗号資産担当)、Peter Thiel (Paypalマフィアの1人/メンター的存在)、Marc Andreessen(A16Z)がいます。彼らはテクノロジーと資本主義の推進と加速を重視しており、いずれもテクノロジストでありキャピタリストです。

ビットコイン(BTC)の価値がさらに上がると予測できる理由

ビットコインの時価総額は2024年末時点で約1.8兆ドル(280兆円)であり、2025年もより価値が高まります。その一つの要因としてアメリカをはじめとした国家がデジタル資産としてビットコインを保有する動きが注目されています。

トランプ次期大統領が就任直後に提出予定の「戦略的ビットコイン準備金(Strategic Bitcoin Reserve)」に関する草案では、5年間で年間20万BTC(合計100万BTC)を購入し、国家資産として保有する計画が含まれています。

この動きは、ビットコインを「デジタルゴールド」として位置付け、国家の財政基盤の多様化と強化を目的としています。またインフレ率の上昇や通貨切り下げ、財政赤字の拡大といったマクロ経済的リスクに対処するために、各国政府がビットコインを戦略的に保有する動きが加速しています。

おそらく企業も、デジタル資産としてビットコインを保有するケースがより増えると考えられます。

新しい社会構造が再構築される

その裏側で起こることは必ずしも良いことだけではないはずです。新たな課題、新たな複雑な社会が生まれ、崩壊する仕組みの間にこぼれ落ちる人たちの存在も多く見られることになるでしょう。

しかし、このテクノロジー革新とデジタル通貨の普及など、一連の流れで起きていることは産業革命以来の社会の構造変革であり、インフラ基盤の再構築へとつながる可能性があります。

産業革命時には労働を求めて多くの人々が農村から都市に移動し、働き方や生活スタイル、価値観が変わったように、社会構造やインフラが変わることにより、私たちの社会のあり方が劇的に変わる、その分水嶺となるのが、この2025年なのかもしれません。

2025年、テクノロジー革新の世界線

1.AIエージェントによる自動化がより顕著に

テクノロジー界隈では誰もが2025年は「AIエージェント」について話題にしています。もちろん起業家や投資家によるポジショントークの側面があり、実際にそれを社会で使っていけるレベルのモノになるのかは別問題ですが、ユースケースが増えることによりAIエージェントの最適化が進むことになります。

1月7日からスタートしたCES2025で、NVIDIAのFounder and CEO, Jensen Huangの基調講演では「将来、全ての会社のIT部署はAIエージェントの人事になる」 と語っていました。

「AIエージェント」はソフトウェアの上だけではなく、ロボット技術とも連動し、あらゆる人間の仕事を代替してくれる存在になります。日本は、少子高齢化による労働市場の縮小に対するソリューションが求められているタイミングなので、より貪欲にこの分野を取り込んでいくと考えられます。

OpenAIも2025年内に独自のAIエージェント「Operator」をリリースする予定です。すでにその技術開発が注目を集めています。1月6日にはOpenAIのCEOサム・アルトマン氏が、「2025年中にバーチャル従業員としてAIエージェントが労働力に加わる可能性がある」と発言しており、同様のことは各企業において、特にIT企業においてはAIエージェントが従業員として働くことが顕著になるでしょう。

2.自動運転が社会基盤へ

Alphabet傘下のWaymoは2024年で、サンフランシスコ、フェニックス、ロサンゼルスで週5万回以上の有償運行を達成しました。Waymoは「レベル4」の完全無人自動運転技術を採用しており、東京でも2025年から運行を始めるというアナウンスをしています。

実際にWaymoが導入されている都市では、軒並みUberに迫る勢いで乗車数が伸びているとのことです。

この流れは、日本においても公共交通機関やライドシェア市場に大きな変革をもたらします。そして一番大きなインパクトが日本の経済を支える基幹産業である自動車産業を直撃するのではないかと考えられます。

日本の基幹産業の衰退

2024年の末には、日産とホンダ、三菱自動車の経営統合が発表され、自動車産業の再編が進むことになりました。これは日産だけの問題ではなく、日本車自体が売れなくなってきていることにありそうです。

世界の自動車市場を奪っているのが、BYDやNIOなどの中国メーカーです。BYDの2024年に販売した乗用車台数は425万台、前年比41%増加しています。 EVの年間販売台数では、TESLAに肉薄しており、日本メーカーや欧州メーカーが直面している苦境と対照的です。

自動運転とEV(電気自動車)の相性は良いので、自動運転が普及するにつれ、EVへの移行が遅れている日本メーカーが、世界で選ばれなくなっていくことが予想できます。そうなれば基幹産業である自動車産業が支えている、地方の多くの中小企業、工場にも多大の影響が出ることになり、地方経済にも影を落とすことでしょう。

自動運転という新しい社会基盤

NvidiaのJensen Huangは「1億台の車が毎年開発され、路上には10億台が存在する市場の多くが自動運転になる」と予想していましたが、これだけの量の自動運転が普及した世界では移動コストが圧倒的に減ると考えられます。

人はより多様な場所へと移動し、新しい生活スタイルや仕事の仕方が生まれます。その市場規模は現在の自動車産業を凌ぐものになるかもしれません。それは新しい社会基盤として従来の世界を変えていくでしょう。

3.ビットコインやステーブルコイン決済の普及

画像引用:Forbes

デジタル資産、仮想通貨を国や企業がより安定的に保有したり、決済できるような環境が整ってきています。特にステーブルコインは、デジタル経済の基盤として方々から注目されており、中央銀行デジタル通貨(CBDC)との共存も視野に入れられています。

CBDCが国家主導で発行される一方、ステーブルコインは民間主導で柔軟なサービス提供が可能となり、例えばAmazonやAirbnbなどでステーブルコインが決済されるようになれば、より一般の人が利用するケースが増え、グローバルな金融インフラとしての役割を担う可能性があります。

2024年11月のStripeによるステーブルコインのインフラを提供するスタートアップ、Bridgeの約1500億円で買収することをリリースしていましたが、ステーブルコインの今後の市場性に対しての評価を表していると考えられます。

通貨の歴史では、通貨発行権は歴史的に国家の主権と権力の象徴であり、これを掌握することは経済的安定や政治的支配を確立するための重要な手段でした。多様なデジタル資産、仮想通貨が流通することは、新しいデジタル経済圏へと進化し、国際金融システムや経済活動全体が再構築され、「新たな世界線」が形成される可能性があると考えられます。

AIエージェントとブロックチェーンが関連するのはなぜか?

このAIエージェントとデジタル通貨の裏側のブロックチェーンという技術の2つの流れが重なっていくことには重要な意味があります。

信頼できるAIエージェントを見極める

例えばAIエージェントが自動で顧客とやり取りをする場合、過去のチャットやメールにアクセスして、それまでの顧客とのやり取りのデータを取得して、他の顧客とのやりとりも学習した上で、どのように返信するべきか自律的に行動することになります。

また旅行に行くとなった場合は、AIエージェントはカレンダーにアクセスして、前後のスケジュールを把握した上で、宿泊予約を行い、クレジット情報などに基づいて決済しなければなりません。

つまりAIエージェントにかなりの個人情報や権限を渡すことになります。結構怖い話に聞こえないでしょうか。そこまで情報を渡すのであれば、AIエージェント自体をかなりの程度、信頼する必要があります。

「良いAIエージェント」と「悪いAIエージェント」がいる場合、「良いAIエージェント」をどのように見分けるのでしょうか?そのようなときにブロックチェーンのように改ざんできないデジタル証明などを通して、自分のAIエージェントが本物であり、「良いAIエージェント」であることを証明してもらう必要が出てくるのです。

AIエージェントが通貨取引を行う

AIエージェントが決済するための基軸通貨がブロックチェーンを基盤としたモノになる可能性があります。

例えばAIエージェントが資産運用をするという場合など、AIエージェント自体が自律的に決済や通貨取引を可能にするためにブロックチェーンネットワークが必須になります。AIエージェントが現状の銀行口座にアクセスするというのは非常に難しいのが現実です。その点、オンチェーンでつながっているデジタル通貨であれば、AIエージェントが持つWalletから自在に決済したり、通貨のやり取りが可能になります。

AIエージェントと人間を見分ける

「Orb」は目の虹彩データをスキャンします。非常に高い精度を持つ生体認証技術として虹彩認証を行います。それはAI時代において「人間であること」を証明するためです。メタバースのようなバーチャルの世界観やゲームの中では、AIが人間のように振る舞い、見分けがつかないでしょう。そんな世界では、自分が人間であるということを証明しなければならない場面も発生すると考えられます。

2025年の今は「AIエージェント」がトレンドなので過剰な期待はできません。しかし長期的に過小評価してもいけないと思います。

テクノロジーが社会を革新していく

テクノロジーが社会を変えていくのがまざまざとみれる、それはワクワクすることです。

人類はこの新しいパラダイムをどう捉え、どう向き合っていくのでしょうか?
そして私たちはあらゆる選択肢の中からどんな未来を創ることを選択していくのでしょうか?

私たち一人ひとりの手に選択肢があります。

それを認識して、世界と向き合いながら、社会の複雑さと折り合いをつけ、より良いものにしていくことを選択し続けることができれば。そうすれば今よりも拓けた未来、多くの人にとって生きやすい社会がそこにあるのかもしれないと思います。

革新的なものは必ずしも最新ではない

革新的なもの、世界を変えるものは必ずしも見たことのないもの、この世で全く知られていなかったものではありません。新しいものは既存のアイデアや技術を新たな視点で再解釈したり、それを更新し続けた先に生まれます。

  • 龍安寺の枯山水(石庭)は昔から変わらず伝統であり歴史であるが、毎日職人や庭師により手入れがされており、実は常に新しい。
  • ユニクロは「あらゆる人のための服」というLifeWearの理念が、他のブランドに比べて異例なほどのシンプルな服を生み出し、効率的に量産し、流通させ、高品質かつ低価格の商品を実現したことがイノベーションだ。その一つ一つの積み重ねが新しい。
  • スペースXのロケットは技術的に最新の技術というわけではないが、既存の技術や物を再利用しながら打ち上げコストを削減することに圧倒的にフォーカスして、従来の100分の1程度を実現したことがイノベーションであり新しい。

新しい世界観というのは、何か突拍子もないものではなく、私自身の日常の進化の積み上げが生み出すものです。他人事にせずに、私たち自身を更新し続け、変化し続けることの先にあるものだと思います。

新しい世界観を描く

クラウドットの2025年のテーマは「新しい世界観を描く」です。なんともふわっとしていて、先が見えないような、何が正解なのかわからない印象かもしれません。

しかしそれぐらい未来の不確実性は高いのです。

そのような不安定で、答えが見えない中でも、私たちが起点となりクライアントや地域、社会を巻き込める「コト」を描き続けることが大切だと思います。単にサービスを提供するパートナーとしてだけではなく、一緒に価値観やカルチャーを共創していくこと、お互いにワクワクした関係性を創っていく意思を持ち続けることにコミットしていきたいです。

そして日常に立ち上がる新しい1日1日を更新し続けていくことが、私たちにとっての「新しい世界観を描く」ことだと思いました。

参考

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