仕事観を変えた、秀逸コピーライティング | 細田高広さん
こんにちは、ライター&コーディネーターの花輪です。
少し経歴の紹介をしますと、都内で不動産関連のコピーライターと雑誌編集を経験後、長野にUターンしクラウドットでコワーキングの運営とライターを兼務しています。
長野ではコピーライターの業務はあまり行っていませんが、名作コピーには自分の仕事のベースとなっている考え方や言葉がつまっているので、皆さんにご紹介できればと思います。
コピーライター・細田高広さん
今回はTBWA/HAKUHODO所属の細田高広さんのお仕事からご紹介。なんとなく新しいコピーを探そうと思い、検索していて偶然見つけた方です。
下記は、五明(ごみょ)という飲食店のポスターの1つ。
海も山もある故郷を、 なにも無い町と呼んでいた。
小さくまとまりたくないと、
ふるさとを飛び出して二十年。
猫の額ほどの家から、肩をすぼめて電車に乗り、
小さな会社の、小さなデスクに通う。
そんな未来が分かっていても、
あの日の俺は同じ決断をしたのだろうか。
夜十一時の居酒屋のカウンター。
ひとりで呑むのも、もう慣れた。
目の前には、地元のお酒と、
地元の名物だった鰯のへしこ。
親にはもう5年近く顔を見せていないが、
胃袋だけは、こうして毎週帰省している。
あの町には、海があり、山があり、
魚がいて、酒があった。
友人がいて、家族がいて、
たしか、恋人だっていた。
何も無いのは…
思わず、日本酒に手が伸びる。
何も無いのは、都会の方だったのかもしれない。
少し濁ったお酒を眺めながら、
東京でどうしても見つからないものたちを、思う。
いつしか手の上のスマートフォンは、
新幹線の予約画面を開いていた。
今宵も、一杯。
五明
【五明(飲食店)のポスター】
コピーライター:細田高広
アートディレクター / デザイナー:小杉幸一
イラスト:細田雅亮
勝手に講評:このコピーのココがすごい!
ポイント1)共感できる物語
地方出身者ならば共感できるポイントが多く、
「全国各地の地酒を楽しめ、そのお酒に合う郷土料理がある」というお店の特長を、
共感できる物語に変換しているように感じました。
都会に住んでいてもこんな店が近くにあったらいいなと、
情景が浮かんでくるようなコピーです。
ポイント2)品の良さと信頼関係
飲食店だったら、こんな店でこんなメニューがあって・・・
みたいな話になりがちですが、そういったスペックに関しては直接的にいわず、
「小さくても味わい深い小料理屋の雰囲気」を
ひとつの物語として感じさせる品の良さがあります。
コピーの素晴らしさは前提となりますが、
この方向性でOKをだしたクライアントさんも素敵ですね。
クライアントの理解や信頼関係があるというのもポイントかと。
ポイント3)ロサンゼルスの広告代理店へ出向後、書かれたコピー
このコピーを書かれた細田さんという方、
ロサンゼルスの広告代理店・TBWA/CHIAT/DAYに出向していたそうです。
アメリカの代理店は日本よりも“物語発想”を大切にするので、
帰国後も見る人の人生に関わるような視点でコピーを書くようになったとのこと。
いかがでしたでしょうか。
次回も「仕事観を変えた、秀逸コピーライティング」をご紹介できればと思います。