2025年にイノベーションを促進するもの
Andreessen Horowitz「Big Ideas in tech 2025」
a16zが2025年に期待できるイノベーションをまとめた記事を公開しています。
- アメリカのダイナミズム
- バイオ + 健康
- 消費者向けテクノロジー
- クリプト
- エンタープライズ + フィンテック
- ゲーム
- 成長段階のテクノロジー
- インフラストラクチャー
2025年は各方面の技術がより複合的に変化する年になる予感がします。
AnthropicのCEO、「強力なAI」についての定義を語る
AnthropicのCEO Dario Amodei(ダリオ・アモデイ)が「強力なAI」について詳細の定義を語ったブログを公開しているので共有しました。
- ほとんどの人は、AI のプラス面がどれほど劇的なものになり得るかを過小評価している
- 「強力なAI」は2026 年という早い時期に登場しうると考えている
- 強力なAIの定義
- 生物学、プログラミング、数学、工学、執筆など、ほとんどの関連分野でノーベル賞受賞者よりも賢い
- 「話しかける賢いもの」であるだけでなく、仮想的に作業する人間が利用できるすべての「インターフェイス」を備えている
- 受動的に質問に答えるのではなく、自律的に完了までに数週間かかるタスクを任せることができ、実行できる
- 数百万のインスタンスを実行するために再利用することができ(これは、約2027年までに実現)、モデルは人間の約10倍から100倍の速度で情報を吸収し、アクションを生成する
AIが科学や社会課題に与える知能の限界収益性については考察すべき内容で、今後のAIにおける進化の方向について示唆に富んだ内容でした。AGIについては頻繁に話題になりますが、あまりしっかりとした定義がないので「強力なAI」というAnthropicのCEOがしっかり解釈を提示することには意味があると思います。Dario Amodeiは一貫してAIに関する倫理的活用について発信をしており、AIに対してポジティブでありながら、Open AIのSam Altmanよりもその活用について注意深く、慎重さを示しているされる人物です。
Dario Amodeiは大規模言語モデルのClaude AIを開発する企業Anthropicの共同創設者であり、CEOを務めています。OpenAIの元研究担当副社長であり、過去にはGoogleやBaiduで一貫してAI研究開発を行ってきました。Anthropicには、OpenAIのSuperalignmentチームの共同トップだったJan Reike(ヤン・ライケ)や、OpenAIの共同創業者でAIアラインメントを統括していたJohn Schulman’s(ジョン・シュルマン)が参加しています。2024年10月にはOpenAIの創設チームのメンバーでありアルゴリズムチームのリーダーだったDurk Kingma(ダルク・キングマ)もAnthropicにジョインしており、Dario Amodeiの信念に多くの開発者が共鳴しているようです。
RTFKTがシャットダウン
RTFKTは2020年のNFTの象徴的なプロジェクトの一つで、デジタルスニーカーとデジタルファッション文化の頂点として、NIKEが2021年に買収していました。最近のNIKEの業績低迷を受けて、今年10月に新しいCEO Elliot Hillが就任し、事業整理の一つとして今回の形になりました。今後は過去のプロジェクトを保存するための新しいウェブサイトを立ち上げる計画があるようです。
NFTという響きが懐かしいぐらいですが、今後どのようにオンチェーンの価値が浸透していくのか注目したいと思います。
Minecraft内でAIと人間が共存することを想定したシュミレーションについてのレポート
Project Sid: Many-agent simulations toward AI civilization
Minecraft内で数千体の自律型エージェントAIが人間と共存することを想定したシュミレーションする『Project Sid』についてレポートされています。
- PIANO はが中央の意思決定システムを通じて一貫した動作を維持しながら、複数のプロセスを同時に実行できるようにするAIエージェント
- 最初は同一の PIANO エージェントを 30 体をMinecraft の村 1 つに配置した。社会的交流を通じて、AIエージェントは仲間の社会的動機を理解し、独自の目標を生み出し、農民や芸術家など多様な職業への特化した
- AIエージェント同士が集団ルールに反応したり、影響を受けてルールを遵守したり修正したりした
- 6 つの町と農村地域に 500 人のエージェントを分散させるというシミュレーションでは、都市部では田舎の地域よりも多くの文化的コンテンツが生成され、ある地域では環境テーマが採用され、別の地域ではいたずら文化が受け入れられるなど、AI 社会が独自の文化的アイデンティティを開発し、複雑な信念体系を維持できることを実証した
- 宗教も布教活動を通じて広がり、都市部と農村部のAIエージェントの思考や会話に現れた
AIエージェントが職業を自ら選んだり、民主的なシステムに参加し、文化交流に従事するなど人間活動をシュミレートしている様子が興味深いです。ただ空間推論や物理的な調整などの基本的な機能に調整が必要ということや、生存、好奇心、社会的絆などの人間の動機要素が欠けているということで、今後AIエージェントが進化していく先のシュミレーションレポートが楽しみです。
Z世代の若者にとって、出会い系アプリの目新しさは薄れつつある
Gen Z is breaking up with dating apps, Ofcom says
Ofcomは、イギリスのトップ4の出会い系アプリの利用が2023年以降減少しており、Tinderは60万人、Hingeは13万1000人、Bumbleは36万8000人、Grindrは1万1000人のユーザーを失ったと述べています。このわずかな減少は、Z世代のデート習慣の変化に関連している可能性があります。
- Tinderの親会社Matchグループは、若年層のユーザー獲得に問題があることを認め、「今日の若年層のユーザーにより響くアプリ内体験の形成」に注力する
- Z世代のユーザーは「よりプレッシャーの少ない、より本物のつながりを見つける方法」を求めている
- 出会い系サービスは18~24歳の18%、25~34歳でも同程度の割合で浸透している
Roblox上でデートするZ世代も多いと言われるように、「より本物のつながりを見つける方法」としてゲームが新しい出会いの場所だったり、海外ではランニングクラブが増えており出会いの場になりつつあるようです。
YouTube はポッドキャストの最大のプラットフォーム
Why Everyone Is Now Watching Podcasts on YouTube
YouTube は、ポッドキャストで Spotify や Apple よりも大きくなっています。今ではポッドキャストを聞くだけではなく、視聴しています。
- 毎週ポッドキャストを聴く人の31%が、YouTubeが最もよく使うプラットフォームだと答えている
- Spotify のSEO、Daniel Ek曰く「すべてがビデオ中心になりつつある」
- Z世代の嗜好がポッドキャストのあり方を再定義している
- 選挙戦の最終段階で、ドナルド・トランプ次期大統領は、YouTubeで合計 1 億回以上の視聴を集めた。その中にはジョー・ローガンとの対談も含まれている
- YouTube は最近、Netflix を抜いてアメリカで最も多くのテレビ視聴者を獲得したストリーマーになった、アメリカでは毎月 1 億 5000 万人がテレビで YouTube を視聴しており、これは YouTube がほぼ全米の半分のリビングルームを制覇した
- 5年前はYouTubeがビデオポッドキャストが流行り始めていることに気づき始めた
- パンデミックで、ポッドキャスターがZoomでの会話を録音し始め、人間同士の交流への需要が高まり、リスナーが実際にそれを視聴するようになった
- 「このトレンドが自然に現れているのを見て、投資したいと思った」とYouTubeの副社長、ティム・カッツがコメント
Podcastは新しいメディアとして成長してきましたが、Youtubeがしっかりこのトレンドを抑えていたことが興味深いですし、Youtubeが結果としてPodcastの市場を広げていることにYoutubeの凄さを感じました。
日本小説、イギリスにおける翻訳フィクションの売上の25%を占める
Surrealism, cafes and lots (and lots) of cats: why Japanese fiction is booming
2022年のニールセン・ブックスキャンの数字によると、日本のフィクションはイギリスにおける翻訳フィクションの売り上げ全体の25%を占めているようです。
- ガーディアン紙によると、2024年のこれまでの翻訳フィクションのトップ40のうち、43%が日本のもので、柚木麻子の『バター』がトップに立っている
- 1990年代には、村上春樹と吉本ばななながイギリスで人気を博した
- 村上春樹と吉本ばなななの作品は「政治に無関心、あるいは不満を抱き、思春期あるいは思春期後のサブカルチャーとともに生きることに満足している若者の経験を伝えている」と大江健三郎の批判を受けたが、疎外感、シュールレアリズム、社会的期待への抵抗は、今日のベストセラーの日本の作品にも表れている
- 日本の犯罪小説は古典も現代も大きく成長しており、今年の翻訳小説トップ20には柚木の『バター』と、松本清張の『東京急行』がランクインしている
- 村田沙耶香、川上弘美、川上未映子などの作家による、女性視点の文学小説も急増している
- マスコミではあまり取り上げられないが、業界では「癒し系」または「心温まる」フィクションとして知られている心温まる本は、今年の日本のフィクションベストセラーの半分以上を占めている
- 繰り返し登場するモチーフは、コーヒーショップ(川口俊和の『コーヒーが冷めないうちに』)、書店と図書館(青山美智子の『お探しのは図書館にあります』)、そして何よりも猫(新海誠の『彼女と彼女の猫』)である
日本の文学やコンテンツが世界でより拡張している点が興味深いです。日本のインバウンドが増えていることの一因に、日本人をより内面的な部分を理解している人たち、理解したいと思っている人たちが増えているのかもしれません。
※本記事では一部でClaude、ChatGPT、Midjourney、DALL-E3などの生成AIを活用して作成しています