
【2025年3月】Christie’sが初めて人工知能を使って制作したアート作品に特化したオークションを実施/Deepseekに続く、中国発のAIエージェントManus AIがリリース etc…
テクノロジーやマーケティング、トレンド、カルチャーなどのニュースをMonthlyで紹介する本シリーズ。2025年3月に社内で話題になったTOPICをダイジェストします。Weeklyで更新を予定していきます。
「意味のイノベーション」とは

今のUXの風潮自体が「意味のイノベーション」を生みづらくしている
「意味のイノベーション」とは = 機能改善や問題解決を超えて、製品やサービスの「意味」そのものを革新することです。
- 「測定可能」、「合意形成のしやすい」、「ROIの説明がつく」で100人のユーザーが抱える不満をすべて解消したとしても、新しい意味を創造したとは言えない
- 意味のイノベーションとは単なる改善ではなく、「これは良い・善いものになるはずだ」
- 「どの軸が重要か」という選択自体が、分析者の主観に基づいている
- 意味のイノベーションとは主観的に行われる
- デザインには必ず作り手の思想が反映されている
- 主観を排除する風潮はUXデザイナーの「意味の提案者」としての役割を奪っているかも知れない
- すべての組織は、何らかの思想を持っている、それを曖昧にしたまま進めるのではなく、明確にし、それを基軸としてデザインを進めるべき
全てのイノベーションや新しい価値観の中で重要な視点だと感じます。
マクドナルドもユニクロも、ある意味使い古された業界から出てきているが、それぞれ新しい意味のイノベーションがあり、そのイノベーションが本物だったからこそ成長し続けているのだと思います。
AI時代においても、平均のクオリティを引き上げるのはAIですし、斬新なアイデアや出口戦略を提案できるかもしれないが、それが自分たちの組織から見て、良いか悪いかは人が決めるようになると思います。
アイデアの作り方
古い本ですが、「アイデアの作り方」はアメリカの広告マン、ジェームス・W・ヤングによる1940年初版の名著で、アイデア創出の原理とプロセスを簡潔にまとめた本です。
アイデアとは要素の新しい組み合わせです。
そしてアイデアを作るために必要とされる「心の技術」として5つのステップが紹介されています。
- 資料を収集する -特殊資料と一般資料を十分深く掘り下げる
- 咀嚼する -物事を字義通り解釈しない
- 問題を意識の外に放り出す -自分の想像力や感情を刺激するものに心を移す
- 常にそれを考える -最も期待しないときにそれは訪れるかもしれない
- 人々の批判を仰ぐ -良いアイデアは自分で成長する
修練の結果としてアイデアは生まれるものである
言葉そのものをアイデアである。言葉を集めることにより、アイデアを集めることができる
「60分で読めるが、一生役立つ」と書評されていますが、アイデアを生み出すための実践的な知識です。しかし実際に実行するには魔法のような方法があるわけではなく、「心の技術」として自分としっかり向き合う必要があるなと感じました。
Christie’sが初めて人工知能を使って制作したアート作品に特化したオークションを実施

Christie’s AI art auction outpaces expectations, bringing in more than $728,000
Christie’sが初めて人工知能を使って制作したアート作品に特化したオークションを実施しました。
- AIアートオークションは予想を上回り、72万8000ドル以上を売り上げた・クリスティーズにオークションの中止を求める6,500近い署名が集まったが、中止はされなかった
- 目的は「テクノロジーとアートの限界を押し広げる素晴らしいクリエイティブな声にスポットライトを当てること」
- リサーチによると新しいバイヤーは、より実績のあるコレクターよりもAIアートを好む傾向がある。登録入札者の37%がオークションハウスの初心者、入札者のほぼ半数(48%)がミレニアル世代またはZ世代だったという。
- NFT市場とAIアート市場が混同されるが、NFTコレクターが投機目的ではなくより洗練された、目的のある、コンテンツを求めている兆候
人間とAIの芸術作品の取り扱いにおける課題はより複雑になっていくと感じます。
ただAIアートにより新たにマーケットに入ってきているZ世代も増えているということで、アートの民主化は加速していくと思います。
坂本龍一の「音を視る 時を聴く」でも、若い世代がとても多いのに驚きました。
正解を誰も持っていない時代だから、Authenticに感じられるものを探しているのではないかと思います。
坂本龍一が過去のインタビューで「作曲家自身の“発明“は、せいぜい1、2%程度で、最大でも5%といったところ。作曲の大部分は過去の作品の引用」と言っていたのが印象的です。
想起したのが、「ストーリーよりナラティブ、コンセプトよりコンテクスト」などのように価値観の変化とか、オープンソースやCommonsなどの社会的基盤の共通化などの概念です。インターネットの登場で多くのリソースが分散可能になり、多くの資源が共有可能になりました。それによってある意味、強制的にまたはボトムアップ的に、著作権や所有権などに関する考え方も技術の流れの中で形を変えてきました。YoutubeやSpotifyなどによりコンテンツの流通が変化しました。
作品の背景、制作者の意図から始まっても、アートの持つ余白性がそれを受け取る観客をアート作品への参加者としてSNSやコミュニティを通じて二次的・三次的に解釈して、再構築されることになります。彼らが生み出す作品の中でアート作品のストーリーやコンセプトは再生成されてRemixされること自体が、価値になるからです。
端的にいうと、今後はよりアーティストと観客の境界が曖昧になりコラボレーション型の創作が増え、よりコミュニティドリブンなアートシーンが広がるのだと思います。
坂本龍一が若い世代に受け入れられるのも、過去を引用しながら常に新しい解釈をアウトプットした作品の余白性、コラボレーション性にあるのだと思います。だからいろんな作家やアーティストが引用したり参照したりして、コンテクストがつながった形で新しい表現をしていくことができ、つまりそれは常に新しいものです。
AI時代のアートも、レガシーな人たちからすると「いかがわしい」ものかも知れませんが、アートは本来「いかがわしい」ものなのではないかと感じました。
Deepseekに続く、中国発のAIエージェントManus AIがリリース
Deepseekに続いて、新たなパラダイムシフトの世界線を見せている中国発のAIエージェントManus AI。
3月6日のプレビュー版公開後、公式サイトには1時間当たり120万アクセスが集中し、一時的なダウンタイムが発生しています。
初期の招待コード発行数は1万件に限定されましたが、闇市場では1コードあたり5万元(約100万円)の値が付く異常な需要になっているようです。
汎用AIアシスタントの能力を測定するGAIAベンチマークでは、Manusが全3レベルで新記録を樹立。複数の独立したAIモデルを協調動作させる「マルチシグネチャーアプローチ」で、各モデルがサブタスクを専門的に処理しつつ、中央のオーケストレーションレイヤーが全体のワークフローを統制する。これで複雑なタスク連鎖処理が可能となっています。
Deepseekはモデルだったが、ManusAIは実際にタスクを実行するエージェントであり、SNS運用や分析レポート作成をマルチタスクで実行していく動画を見ると、確かにインパクトがあります。このスピード感でブレークスルーが指数関数的に増えていくと、2025年度中にも、特にホワイトカラーの業務をかなりカバーできるようになるかもしれません。
それにしても中国はちょっとディストピア感ありながら、人材層の厚さや国内での競争環境など、AI時代の地政学的な強さで世界を圧倒し始めているなと感じます。
トライアルホールディングス、西友を買収し完全子会社化
トライアルホールディングスは、西友を3800億円で買収し完全子会社化しています。トライアルホールディングスは、福岡県福岡市に本社を置く、持株会社で、流通小売業を中心に事業を展開する企業グループで、デジタル化を推し進めています。
- AIカメラによる来店客の行動分析やPOSデータを活用し、店舗のオペレーション効率化・棚割り改善等をリアルタイムで行う「スマートストア」を推進
- 社内にデータ分析部門(データサイエンス部門)を組成し、独自の“データ x リテール“の体制を整えている
- ITやテクノロジーを活用したコスト抑制と在庫最適化による低価格の実現が強み
今回の買収で、リテール業界で店舗数では一気にトップ3内に浮上しています。
- ドンキホーテ:636店舗
- トライアル:560店舗
- イオン:558店舗
地方企業の全国展開における新しい勢力となります。
2040 年までに世界の UX 専門家の数は現在の約 5 倍になると予想

ユーザーエクスペリエンス(UX)の分野における第一人者であるヤコブ・ニールセンがデザイン領域が今後どのように変化するかを予想し、2040 年までに世界の UX 専門家の数は現在の約 5 倍になると予想されていました。
- 2040 年までにデザイン作業は 20 倍になると予測。AI が 3/4 をこなすとしても、人間の数は 5 倍必要
- コンテンツ戦略、サービス設計、UXアーキテクチャと戦略の役割では雇用が 10 倍になる可能性
AIの領域は広がっていきますが、デザインはより多様な意味を持ちながらUX人材の市場は広がるという予測です。
確かに今人間がやっているオンラインのタスクのほとんどは、AIが代替可能になると思います。今の現在のAIが何をできるかで判断しても、それは時間が解決するものであり、課題が見えていることに対するソリューションは、アイデアも実行レベルも質も全てAIの方が優れたアウトプットを出すようになります。
だからこそ今、課題として感じていないことを疑うこと、見えていない世界を知ること、人の本来持っている欲求、欲望、願いなどを洞察する力から、そこにある理想と現状のギャップを認識することが、デザイナーの仕事になっていくのではないか、と思いました。
デザイナーはビジネスの人なので、ビジネスフィールドでどのようにユーザーが考えているか、願望を抱いているか、知識だけではなく深いインサイトを持つ必要があります。カルチャーのトレンドや社会構造、ビジネスのバランス、そしてデータをエビデンスとして、そしてそこに人としての感性を重ねて、UXにフォードバックできるかが重要だと感じています。
※本記事では一部でClaude、ChatGPT、Midjourney、DALL-E3などの生成AIを活用して作成しています。