「ブロックチェーン」というキーワードを最近よく耳にしますね。
ビットコインの文脈の中でよくでてくる「ブロックチェーン」なのですが、「ビットコイン」はなんとなく知っていたけど、「ブロックチェーン」は知らなかったという人も多いのではないでしょうか?
私もぼんやりと概念的なことしか知りませんでしたが、『WIRED』VOL.25の特集記事を読んで非常に刺激を受けたので、私なりに理解したことを初心者向けブロックチェーンの記事としてまとめてみたいと思います。
ブロックチェーンとは?
ブロックチェーンとは、分散型台帳技術[1]、または、分散型ネットワークである[2]。元来、ビットコインの中核技術としてSatoshi Nakamotoによって考案、実装された技術を独立させたものである。(引用:Wikipedia)
ブロックチェーンは分散型のコンピューターネットワークであり、中央集権を置かずにして信憑性のある合意に到達する方法を可能にする技術です。
分散型のシステムは世界中に点在するパソコンにデータを置くことで、(一つの場所にデータを置かないようにして)壊すことができないネットワークを作る技術です。
その分散型のネットワークを認証システムをすれば、中央集権が不在でも信憑性のある合意を達成させることができます。
分散型システムを止めるには地球全体を壊滅させるほどの隕石が宇宙から降ってくるか、全世界の機械類が同時に破壊されてしまうほどの大規模な太陽風に襲われるかぐらいの災害が起きる必要があります。
なぜなら、データを保持する全てのパソコンを壊さなければ、ブロックチェーンは複製しながら復活することができるからです。(引用:仮想通貨の根幹であるブロックチェーン・テクノロジーとは)
「ブロックチェーン」を2分で理解できるムービー
少し理解ができたような気がしますね。
ブロックチェーンが持つ可能性について著名人のコメントをいくつかご紹介します。
マークアンドリーセン
ビットコインはそもそも最も基本的なレベルで、コンピュータサイエンスにおけるブレイクスルーである。このブレイクスルーの重要性は、どれだけ誇張しても言い過ぎることはないだろう。
(引用:ビットコイン—「ブロックチェーンの衝撃」~ビットコイン、FintechからIoTまで、社会構造を覆す破壊的技術)
(画像:THE WALL STREET JOURNAL)
伊藤譲一
ブロックチェーンには、インターネット並みのインパクト、そして多くの機会とイノベーションを解き放つポテンシャルがある。
(引用:MITメディアラボ 伊藤所長が明かす「お金」の未来予想図)(画像:academyhills)
堀江貴文
僕のようにブロックチェーンの仕組みを理解している技術者と企業が、現地で正しく環境を整えれば、「コストをかけずに銀行ができるならいいじゃん!」というノリで、アフリカ諸国は続々導入していくだろう。
(引用:アフリカに潜む巨大なビジネスチャンス)
(画像:東洋経済)
中央集権システムから分散型システムへ
お金の取引は銀行やカード決済会社のような管理する「第三者機関」のシステムが取引データを管理し、信用保証を担保する役割を担っています。ですから「第三者機関」が中央集権として絶対的な力を持っています。
しかしブロックチェーンにはこの中央で管理する取引データの管理者が存在しません。取引データは、ネット上に存在する「台帳」に保管され大勢の利用者とデータを共有する状態になります。ブロックチェーンを使えば第三者機関を介さずに売主と買主が直接取引きが可能です。このように取引データを中央に集めるのではなく「分散」させることによりデータが改ざんされにくく、低コストでにより自由な金融取引を行うことが可能になります。
ブロックチェーンとは、全取引履歴のデータは分散された世界中の多数のデータベース上に保存されていて、お互いにシステムを監視し合うことにより、データの正確性を保証する仕組みです。
ブロックチェーンの技術要素
ブロックチェーンは以下の4つの技術要素からできています。
分散台帳:ネットワーク上で共有管理される取引データ台帳技術
合意形成:ネットワーク内で取引の安全性を保証するプロセス技術
暗号化技術:電子署名機能/認証機能による機密性を確保する技術
業務処理:契約に基づいて検証実施する機能技術
これらの技術を組み合わせることにより、ブロックチェーンは金融や取引の在り方を確変するだけではなく、インターネット以来の衝撃をもたらそうとしています、
iPhoneがスマホとして登場してから、個人がコンピューターを持ち歩く時代になり、SNSにより個人の発信力が高まり、技術だけではなくブロックチェーンを実現可能な要素が文化的にも高まっていると思います。
ではそのブロックチェーンはどんなメリットをもたらしてくれるのでしょうか?
ブロックチェーンのメリット
メリット1:劇的にコスト削減
ブロックチェーンの最大の魅力は「取引コスト」が大幅に削減できることです。第三者機関の仲介を必要としないため、仲介手数料といったコストを理論上はゼロに抑えることが可能と言われています。
「P2P」という複数のコンピュータで全取引データを保持する分散型により、安定したシステムが低コストで開発可能です。
メリット2:誰とでもいつでも取引できる
今までの商取引の中では与信はどうするか、信用リスクにどのように対応するかが課題でした。
ブロックチェーンでは電子署名と分散台帳により高いセキュリティ基準で悪意ある改ざんを防ぐことができます。また「P2P」の仕組みにより「データ消失しない」のでバックアップ不要ですし、「停止しない(ゼロダウンタイム)」ので365日24時間、金融取引が可能です。
ブロックチェーンの衝撃
ここまででは主に既存通貨の代替としてのブロックチェーンについて書いてきましたが、ブロックチェーンは単なるお金の話ではありません。
ブロックチェーンの技術はフィンテックだけではなく、芸術や電気自動車、エネルギーや国などの大きな枠組みの仕組みや構造に対して潜在的破壊力のある革新的なテクノロジーです。
エストニアのブロックチェーン活用がすごい!
エストニアはバルト三国の中で最も北の国です。
そしてエストニアは現職大統領が元プログラマだったり、2007年に世界で初めて議会選挙に関してインターネットを利用した電子投票を行ったり、世界的なスタートアップSkypeを排出したり、学校や政府機関のブロードバンドアクセスは普及率100パーセントだったり…世界随一のデジタル先進国です。
(画像:RETRIP)
エストニアは2002年の電子IDカードを導入し、「e-Estonian」というデジタルプラットフォームを運用しています。国民はひとつのIDでインターネットバンキングや会社・公共施設へのアクセス、納税、選挙参加、病院、処方箋の受け取りまで生活のあらゆることが完結させることができる、国民にとって利便性の高いサービスのようです。(参照:エストニアの電子政府と日本の未来への提言)
世界どこにいてもヴァーチャル住人になれる「e-resident」
そしてエストニア政府が2014年12月から始めたのが「e-resident」。世界からヴァーチャル国民を募るというこのキャンペーンは2025年には1,000万人の登録を目標にしているということですから、人口134万人の国からすると壮大なスケール感ですね。
エストニア政府はBitnationと提携し、ブロックチェーンテクノロジーを使ってパブリックな公証サービスを「e-resident」に提供しています。具体的には電子署名などによりエストニア国内を拠点とした事業や金融活動を世界のどこからでもオンライン経由で運営することができます。そして「e-resident」はどこに住んでいても婚姻や出生、契約などをブロックチェーンを通して証明する事ができるとのことです。(参照:bitcoinmagazine.com)
未来型国家の一つの可能性として
エストニアのような日本やアメリカよりも小さな国が、ブロックチェーンテクノロジーを積極的に取り込み、近代国家のベクトルとは逆行した新たな国家の形を模索しているのは興味深いです。
日本のマイナンバー制度やアメリカのソーシャルセキュリティナンバーなどのように税金を集めることを主に目的とした中央集権的なID制度は、国民の利便性の向上にはあまりつながっていないように感じます。
エストニアのようにテクノロジーを使って徹底的に利便性や効率性を求めてコンパクトな国を作ることは、20年後の未来の一つの形として日本にとって参考似なる事例だと思います。
まとめ:ブロックチェーン「新しいOS」になるか?
ブロックチェーンの持つ可能性を考えると、既存の中央集権的な会社や国家などの既存OS社会の概念を破壊する可能性を強く感じました。特に欧州においてはブロックチェーンのような思考が進んでいて、新たな社会を構成するためのOSとしてブロックチェーンというテクノロジーに対する期待が大きいように思います。
ただブロックチェーンが現状その理想の状態にないのも確かです。例えば現在ブロックチェーンが処理できるトランザクションの取引データ量は世界の標準インフラを担える処理能力とは言えません。コストに関しても1トランザクションあたりの単価は数百円となっているそうで、「低コストで送金できる」という状態になっていません。(参照:「ブロックチェーンはスケーラブル」という神話と現実の課題)
確かにいろんな課題がありますが、個人的にはリリース時のiPhoneがまだ不完全で実用性が優れていたわけではなかったが、結果としてあらゆる業界のイノベーションのトリガーとなったように、ブロックチェーン技術が改善され人間にとって利便性の高いシステムになっていくことに期待したいと思います。